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退職金連載

退職金を銀行に預けたままで大丈夫?インフレ時代に見直したい運用の論点

📌 この記事の結論

退職金を銀行の普通預金・定期預金に預けたままにすることは「絶対に損しない」選択ではありません。金利がインフレ率を下回る場合、実質的に購買力が低下します。2025〜2026年の日本は金利上昇局面ですが、それでも物価上昇との比較は必要です。まず「今の金利と物価の差」を確認してから、一部でも運用に回すかを検討してください。

「退職金を銀行に預けたままで大丈夫だろうか」――そう感じている方は少なくありません。元本が減らない安心感はありますが、物価が上がるインフレの時代には、預けたままにも見落とせない論点があります。ここでは、よくある疑問を質問と回答の形で取り上げながら、退職金の預け先を見直すときの考え方を整理します。慌てて動く必要はありませんが、知っておくと選択肢が広がります。

退職金の預け先を見直すイメージ

Q1. 退職金を銀行の定期預金に預けたままで大丈夫ですか?

A. 元本が守られる安心感はありますが、「お金の価値」という点では注意が必要です。定期預金の金利が物価の上昇率を下回ると、額面は減らなくても、実際に買えるものは少しずつ目減りしていきます。これがインフレの怖さです。預けたままが絶対に悪いわけではありませんが、「金利と物価の関係」を一度確認しておくと安心です。ご自身が利用している預金の金利が今どのくらいか、そして身の回りの物価がどれだけ上がっているかを、一度照らし合わせてみることをおすすめします。その差こそが、見えない目減りの大きさだからです。

Q2. インフレで目減りするとは、具体的にどういうことですか?

A. たとえば物価が年に2%上がる一方、定期預金の金利がそれを下回ると、同じ金額で買えるものが年々減っていきます。通帳の数字は変わらなくても、その購買力は少しずつ下がっている――これが「実質的な目減り」です。長い老後を考えると、この差はゆっくりと、しかし確実に効いてきます。

Q3. では、すべてを投資に回したほうがいいのですか?

A. いいえ、その必要はありません。退職金は「守り」が基本です。すぐ使う生活費や予備のお金は、これまでどおり預金で確保しておくべきです。見直しの対象になるのは、当面使う予定のない「余裕のある部分」だけ。全額を動かすのではなく、一部を物価に負けにくい資産に振り向ける、という発想です。

Q4. 預金以外には、どんな選択肢がありますか?

A. 一般的には、①安定した利息が期待できる債券ETF、②新NISAの成長投資枠を使ったインデックス投資、③高配当株やREITの一部、といった選択肢が挙げられます。いずれも、預金より値動きはありますが、長期的にインフレに対抗しやすい性質を持っています。一度にではなく、時間をかけて少しずつ移していくのが、シニア世代に向いた進め方です。なかでも新NISAは、運用で得た利益に税金がかからない仕組みなので、限られた資金を効率よく育てたいシニア世代と相性が良い制度です。最初の一歩としては、こうした非課税の枠を、無理のない範囲で活用するところから始めるとよいでしょう。

Q5. 資金が大きい場合、ほかに考えることはありますか?

A. 退職金がまとまった額になる場合、全体のうち5〜10%ほどを、より高いリターンを狙う「サテライト資産」に充てる方もいます。これは余裕資金の範囲で行うもので、無理は禁物です。もしその段階を検討するなら、業者選びは慎重に。参考までに、客観的な基準で業者を整理したタイアンブリッジのような仲介サービスを知っておくと、選択肢を比べる助けになります。あくまで全体のごく一部の話で、主役は安定した部分にある点は変わりません。サテライトは「なくてもよい」部分です。気が進まなければ、無理に手を出す必要はまったくありません。退職金の見直しで本当に大切なのは、預けたままで目減りしている部分を、物価に負けにくい安定資産へ少しずつ移すこと。その軸さえ守れていれば、十分なのです。

Q6. 見直すとき、いちばん大事なことは何ですか?

A. 「一度に動かさないこと」と「使う予定のあるお金には手をつけないこと」です。インフレ対策は大切ですが、焦って大きく動かすと、かえって不安の種になります。半年から1年かけて、少しずつ預け先を分散させていく。この落ち着いたペースこそが、退職金の見直しでいちばん大事な姿勢です。

Q7. 値動きのある資産は、やはり怖く感じます。どう向き合えば?

A. その感覚は、とても大切なものです。怖さを無理に抑え込む必要はありません。むしろ、その怖さに合わせて「動かす金額を小さくする」のが正解です。退職金の大半は預金で守ったまま、ほんの一部だけを値動きのある資産に振り向ける。たとえ全体の1割が一時的に下がっても、残りの9割が守られていれば、生活は揺らぎません。少額から始めて、値動きに少しずつ慣れていく。半年、1年と続けるうちに、「思っていたほど怖くない」と感じられるようになる方は少なくありません。怖さは、金額の大きさをコントロールすることで、十分に付き合えるものになります。

Q8. 見直しは、誰かに相談したほうがいいですか?

A. 一人で抱え込む必要はありません。ただし、相談相手は選びたいところです。特定の商品をすすめることが目的の相手だと、こちらの事情より販売の都合が優先されることがあります。できれば、中立的な立場で、あなたの生活全体を踏まえて一緒に考えてくれる相手が理想です。相談する際も、「すぐ使うお金には手をつけない」「一度に大きく動かさない」という二つの原則だけは、自分の中で揺るがさないでおきましょう。この軸さえあれば、どんな提案を受けても、落ち着いて判断できます。

まとめ:預けたままを「見直す」ことから始める

「退職金を銀行に預けたままで大丈夫?」という問いの答えは、「すぐに全部動かす必要はないが、見直す価値はある」です。インフレの時代には、元本が守られていても、お金の価値は静かに目減りしていきます。使うお金は預金で守りつつ、余裕のある部分だけを、時間をかけて物価に負けにくい資産へ。慌てず、分けて、少しずつ。その一歩が、長い老後の安心につながります。退職金を銀行に預けたまま放置するのでも、不安にかられて一気に動かすのでもなく、その中間にある「落ち着いた見直し」こそが、いまの時代に合った付き合い方なのです。まずは、ご自身の預金がインフレに負けていないかを確かめるところから、始めてみてはいかがでしょうか。小さな確認の積み重ねが、大切な退職金をインフレからそっと守る、確かな備えになっていきます。

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この記事の執筆者
木村 誠きむら まこと
編集長・主席アナリスト
証券アナリスト(CMA)/元証券会社アナリスト(在籍25年)

証券会社で25年間、個人投資家向けの市況分析を担当。現在は日本証券ニュース編集長として、初心者にも分かる相場解説を執筆しています。

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