双方向売買が可能なCFD会社の特徴と注意点
CFDの最大の強みの一つは 「売りから始める取引」、すなわち 双方向売買 です。下落相場でも利益機会が生まれ、保有資産をヘッジすることもできます。ただし業者によって双方向売買の条件と規制が異なり、「両建て(ヘッジポジション保有)」が可能な業者と不可能な業者に分かれます。本記事では双方向売買の仕組みから活用法、そして業者選びの注意点までを整理します。

目次
- CFDの双方向売買とは何か
- 双方向売買 vs 両建て(ヘッジポジション保有)の違い
- 両建てが可能な業者と不可能な業者
- 双方向売買を活用した3つの戦略
- 双方向売買時の注意点5つ
- 業者選びでチェックすべき6項目
- よくある質問(FAQ)
1. CFDの双方向売買とは何か
双方向売買(両方向売買) とは、買い(ロング)と売り(ショート)の両方を自由に取引できることを指します。
- 現物株との違い
- 現物株: 買い → 保有 → 売り(基本的な流れ)
- CFD: 売りから始めてもよい(価格下落予想時)
- 双方向売買の作動原理
- [一般的な買い(ロング)取引]
- 安い時に買い → 高い時に売り → 差益で利益
- 例:100円で買い → 110円で売り → +10円の利益
- [売り(ショート)取引 – 双方向売買の核心]
- 高い時に売り → 安い時に買戻し → 差益で利益
- 例:110円で売り → 100円で買戻し → +10円の利益
- なぜ売りから始められるのか
CFDは 現物資産を保有しない 取引です。単純に価格差に賭ける仕組みなので、買いでも売りでも、どちらの方向から始めても構いません。
この仕組みのおかげで以下のシナリオが可能になります。
- 下落相場でも利益を追求
- 市場の方向と無関係な取引戦略
- 保有資産の損失ヘッジ
2. 双方向売買 vs 両建て(ヘッジポジション保有)の違い
ここでよく混同される二つの概念を明確に区別する必要があります。
- 双方向売買(両方向売買)
- 買い、または売りのどちらか一方向ずつ取引
- 同じ銘柄に買いと売りを同時保有することはない
- ほとんどのCFD業者で基本的に可能
- 両建て
- 同じ銘柄に買いと売りのポジションを同時保有
- 例:日経225買い1ロット + 売り1ロットを同時保有
- 業者によって可能/不可能が異なる
- 二つの概念の違いを図解で
- [双方向売買]
- 時点A:日経 買い1ロット
- 時点B:買い決済、日経 売り1ロット(方向転換)
- → 一つの時点で一方向のみ保有
- [両建て]
- 時点A:日経 買い1ロット + 日経 売り1ロットを同時参入
- → 一つの時点で両方向を同時保有
3. 両建てが可能な業者と不可能な業者
業者によって両建ての方針が異なります。
- 両建て可能な業者の特徴
- 買い・売りポジションを別々に管理
- 各ポジションについて別々の損益計算
- 一部のヘッジ戦略に有利
- 両建て不可能な業者の特徴
- 同じ銘柄の反対ポジション参入時に自動で既存ポジションを決済
- 米国NFA規制下の一部業者が該当(FIFOルール)
- シンプルなポジション管理に有利
- 日本居住者が利用可能な主要業者の比較
📌 両建てがご自身の戦略に必須なら、加入前に必ず業者の約款で明示的に確認してください。

4. 双方向売買を活用した3つの戦略
- 戦略① トレンドフォロー(最も基本)
- 上昇トレンド → 買いポジション
- 下落トレンド → 売りポジション
- トレンドが明確な時に最も効果的
- 例:
- 日経225が5日線・25日線・75日線すべて下向き整列
- → 明確な下落トレンド
- → 売りポジションを参入
- 戦略② イベントヘッジ(両建て活用)
- 保有銘柄の短期下落が予想される時
- 現物または買いCFDをそのまま保有
- 同時に売りCFDでヘッジ
- 例:
- アップル現物100株を保有中
- 来週の決算発表直前、短期的なボラティリティが懸念
- → アップルCFD100株分の売りポジションを参入(両建て)
- → 短期下落時に現物の損失をCFDの利益で相殺
- 戦略③ ペアトレード(同業種双方向)
- 二つの銘柄の相対的な差を活用
- 一方の銘柄を買い + もう一方の銘柄を売り
- 市場全体の方向と無関係に利益を追求
- 例:
- トヨタCFD買い + ホンダCFD売り
- 両銘柄ともに自動車業種
- 市場がどちらに動いても、トヨタがホンダより強ければ利益
5. 双方向売買時の注意点5つ
⚠️ 注意点① スワップポイントの負担(両建て時は特に)
両建てポジションは 買い・売りの両方にスワップポイントが発生 します。銘柄によっては両方ともマイナスになるケースもあり、保有期間が長くなるほどコストが累積します。
⚠️ 注意点② 証拠金の二重負担
両建て時、買い・売りの両方に証拠金が必要な業者があります。同じ銘柄でも 二倍の証拠金が必要になる場合がある点 を事前に確認してください。
⚠️ 注意点③ 損益通算の複雑さ
両建ては一方が利益なら他方は損失となる構造です。明確な決済タイミングを決めておかないと、利益側だけ決済して損失側を放置する ミスが頻発します。
⚠️ 注意点④ 「取引しないのと同じ」効果
両建て状態では 市場の方向と無関係に損益が0に近づきます。 「いっそ取引しないこと」と同じ効果になりうるので、明確な目的なしに両建てを作るのは無意味です。
⚠️ 注意点⑤ 税金申告の複雑さが増加
両建て取引は買い・売り各々の損益が別々に計算されます。年末の税金申告時に取引履歴が複雑になる可能性があるので、取引記録をこまめに整理 しておくことが重要です。
6. 業者選びでチェックすべき6項目
双方向売買・両建てを活用するなら、業者選びの際に以下の項目を必ず確認してください。
- ① 売り取引の可否
- ほとんどのCFD業者は売り取引に対応していますが、一部の銘柄は売り不可 の場合あり
- 特に新興市場の株式CFDで発生
- ② 両建ての許容可否
- ご自身の戦略に両建てが必須なら必ず事前確認
- 一部の業者は約款上で明示的に禁止
- ③ 両建て時の証拠金処理方式
- 両方ともに証拠金が必要(二重負担)
- またはどちらか一方のみ必要(ネッティング方式)
- 業者ごとに方針が大きく異なる
- ④ スワップポイントの双方向表示
- 買い・売り各々のスワップポイントが明確に開示されているか
- 一部の海外CFD業者は買い・売り両方のスワップを公開
- ⑤ 24時間取引可否
- 双方向売買戦略はボラティリティの高い時間帯に効果的
- 24時間取引可能な業者が有利
- ⑥ 損切り・利確注文の多様性
- OCO注文、トレーリングストップなど高機能な注文への対応
- 両建て・ヘッジ戦略で特に有用
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 双方向売買と空売りは同じですか? 似ていますが違います。 現物株の空売りは実際に借りた株式を売る行為で、貸借が必要で制約も多いです。CFDの売り取引は 現物株を借りる必要なく、価格差だけに賭ける 構造なので、はるかに自由です。
Q2. 初心者が両建て戦略を使ってもよいですか? おすすめしません。 両建てはヘッジの意図が明確な時に意味のある戦略です。初心者はまず 方向性取引(買いまたは売りの一方向) に十分慣れた後で両建てを試すのが安全です。
Q3. 売り取引時の損失上限はどうなりますか? 理論的に 売りポジションは損失が無限大まで拡大する可能性があります。 資産価格がどこまで上がるか上限がないからです。売り取引時は必ず 損切りラインを設定 することが必須です。
Q4. 両建てを活用したヘッジは本当に効果的ですか? 状況によります。 短期的なボラティリティを避けたい時には有効ですが、スワップ・証拠金の負担 を考えると、単純にポジションを整理する方が効率的なケースも多いです。ご自身の取引コストを明確に計算した上で決めてください。
Q5. 双方向売買が可能な業者はどう探しますか? ほとんどのグローバルCFD業者は双方向売買に標準対応 しています。ただし 両建ての許容・証拠金処理方式・スワップ方針 は業者ごとに大きく異なるので、ご自身の戦略に合う方針を持つ業者を選ぶ必要があります。デモ口座で実際に双方向取引を試してみるのが最も確実な検証法です。
✏️ おわりに
CFDの双方向売買は 「市場がどちらに動いてもチャンスを作れる」 という強力な武器です。しかしその自由の裏には 追加のコスト・複雑さ・リスク が伴います。
特に両建て戦略は、明確な目的がある時のみ意味があります。「念のために両方持っておこう」式の両建ては 取引しないのと同じ効果 を生み出しつつ、コストばかりが累積する可能性があります。
ご自身の取引戦略に双方向売買と両建てが適しているかを検証するには、主要CFD業者のデモ口座 で実際に買い・売りの双方向をシミュレーションしてみることをおすすめします。広告だけで決めるよりも、自分で双方向の注文を入れてみて、証拠金・スワップがどう適用されるかを体感 すれば、自分に合った業者が明確に見えてきます。
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